壺おじさんが生み出した平成最後の怪物『Pogostuck: Rage With Your Friends』

壺おじさんが生み出した平成最後の怪物『Pogostuck: Rage With Your Friends』

Twitterなどでよく聞く「フォロワー」という言葉はゲームの世界にも存在する。

それは、あるタイトルに強い影響を受けて制作されたゲームのことを指す。たとえば、『ダークソウル』が大ヒットした後には、そのシステムを取り入れたタイトル(『Salt and Sanctuary』や『仁王』など)がいくつも作られている。
そういうものをフォロワー作品などと表現し、ときには元となったタイトルから飛躍的な発展を遂げることもある。

今回紹介するPogostuck: Rage With Your Friendsは、2年前に配信者やSNS界隈でブームとなった高難易度アクションゲーム『Getting Over It with Bennett Foddy』のフォロワー作品だ。

愛してくれる人だけが愛してくれればいい

これ以上ないシンプルな目的

『Pogostuck』は、プレイヤーがホッピング(Pogo Stick)に乗った陽気な少年を操作し、スタートからゴールを目指して進んでいくというわかりやすいアクションゲームだ。ホッピングしながら空中で1回転すると、より高く飛べるブースト機能もついた近未来タイプに乗っている。これさえあればどこへでも行ける気にさせてくれるのだ。

ただ、大きな問題がある。ゴールにいたるまでのマップだ。
飛び石のように配置された果物を飛び越え、高さを利用して正確な角度でジャンプしなければ届かない岩壁を越え、しかし、ちょっとしたミスで死ぬ気で乗り越えたエリアまで落ちていく。それがゴールまで延々と続くのだ。

後半になるにつれて、最初の方にクリアしたエリアまで戻されるリスクを背負いながらホッピングを続けていかなくてはならない。そして、「いや、もうホッピング降りて登れよ」と理不尽な怒りを持ってしまうほどに、ホッピングの操作感は繊細だ。

▲初見だと何をどう登っていいのかわからないエリアもある

「俺はおまえの操作したとおりに動いてやるぜ」

しかし、プレイヤーとして言い訳がしにくいゲームでもある。

というのも、『Getting Over It』は独自の操作感が高難易度の要因の1つであったことに対して、『Pogostuck』の操作感はかなり素直だ。つまり、最初から自分の思ったように動かせるのだ。コントローラーのスティックを倒した分、少年はその分だけ素直に回転する。

そして、逆にこれがプレイヤーを苦しめる。「ゲームの難易度は操作性の悪さにあってはならない」という哲学を盾にゲームを放り投げられないのである。一般的なアクションゲームのクォリティという点において、『Pogostuck』は『Getting Over It』よりも洗練されている。

ゲーマーとしての性を突くオンライン要素

そして、もう1つ驚くべき要素は「オンライン対応」である。

世界中のプレイヤーと最大16人が同時に遊べる場所(プライベート専用に切替可能)が用意してあるのだ。同じ難所で何度も一緒に落ちていく見知らぬプレイヤーと謎の仲間意識を持ったり、そこからいち早く抜けたプレイヤーをライバル視したりしてしまう現象が起きる。


▲ちょっとした絵文字を出せるので、非常にゆるいコミュニケーションも可能だ

さらに、エリアの各所にはゴール進捗率ランキングボードが掲げられていて、ほぼリアルタイムで更新されていく。そこで自分のランキングが下がっていくのは、自分が詰んでいる難所より先に誰かが進んだ、ということを意味する。自分でこれ以上進めない、と思ったエリアを今まさに誰かが進んだという事実が奇妙な悔しさを生み出す。そして、その悔しさは謎のホッピングを続けさせるのである。

もちろん、『Getting Over It』にはなかったオンライン要素は、新しいエンターテイメントを追加してるように思う。

いくつかの点において『Pogostuck』はフォロワー作品として進化が認められるゲームだ。

人間の心理をエグることには技術が要る

ここまで書いたが、根っこのところは『Getting Over It』と変わらない。人によっては「クソゲー」と断じられても仕方ないほどの鬼のような難易度を持つゲームだ。みんなにクリアしてもらおうなんて思ってない、クリアできるヤツだけがクリアしてくれ、そんなゲームである。

ただ、プレイヤーが言い訳できるような要素をできる限り排除し、「落ちたくない」「クリアしたい」「休憩したい」という類の心理を悪意と呼んでいいほどの嫌らしさで巧みに突いてくる。オンライン対応によって他人の進み具合を常に目にさせることも含めて、「あと少しで行ける、行きたい」と思わせるのが異常に上手なのだ。


▲進み方がわかった瞬間から理想と現実の隙間を埋め続ける努力が始まる

その結果、負けず嫌いのゲーマーたちは取り憑かれたようにホッピングに乗った少年を操作し続けることになる。クリアして一体何になるのか?そんなことは問題ではない。今まさに誰かが俺を追い抜いたのだ、誰がクリアしているのだ、そのことだけが問題だ。そんな思いに取り憑かれ、気づけば朝日を迎えることになる。

こうなると『Pogostuck』は<洗練された怪物>である。
壺から生まれたのはホッピングの化物だったのだ。


そんな自分も57時間という死闘を乗り越えゴールに辿り着いた。そして、あらためてスタート地点からゲームを開始すると15分程度で85%辺りまで進めることに驚いた。
『Pogostuck』をクリアした人間も、また、怪物になっていたのである。

さぁ、我こそはという読者は720円(定価)で怪物になれるチャンスを掴もう。
 

終わり

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